某ラジオを聞いて思い出した事。
 子豚が可愛いという話で、ミニ豚を飼う人が居るっつう話題が有った訳ですが、俺が12年ぐらい前にアメリカに行った時に潜り込んだ家でも豚を飼っていたんですよ。
 当時の俺は、とある教育機関で数学の教鞭をとっていたんだけど、その時に知り合った同僚が色々な意味で桁外れな人で、嫌な意味で俺と周波数がバチっと合致したんですよ。彼は今、神奈川の某都市にて自民党の青年部の頭をやっていますが、当時は駄目人間をやっていまして、そりゃもう、駄目でした。
 とてもじゃないけれど書けない内容の遊びやら、遊びと言っても良いのかよ?的な事をしていたんですよ。
 で、以前も書きましたが俺には転職癖がありまして、その教育機関も、確か4年目だったかな?退職して無職になることが決まったんですが、その時に一足先にIT企業に逃げていた彼から「いっしょにアメリカ行こうぜ、アレとかアレが激安だしよお」と誘われて、所持金が10万もないのに二週間近くロスをうろつく事になりました。
 二人とも基本的に金を持ってない人なので、ロスに行ってもホテルなんて泊まれる筈も無く、その時に「ツテってのが有るんだ」と、勝手に乗り込んで行ったのが彼が留学中にホームステイしていたヒスパニックの人の家でした。あの当時の俺は全く英語が話せないという、海外旅行なんて論外!状態でしたが基本的に駄目人間というのは図々しいので知ってる単語を適当に話すという方法で溶け込む事に成功。何故か、そこんちのガキのお守りをすれば好きなだけ居ていいという交換条件を引き出す事に成功し、そこに潜り込んだのです。
 まあ、ガキのお守りつっても、ガキは小学生だったので適当にカードゲームに付き合ったり、ニンテンドーのプロレスゲームで対戦してコッテンパンにしてやったり(つかゲヲタ舐めんな)してただけでしたが。あと数学も教えた。これはほら、俺もプロだし言葉とか大して関係ないしさ。
 で、ガキが学校に行き、家の人が買い物などに出かけ、俺と同僚が留守番をしていた時の事でした。
 奴が牙を剥いたのが。
 そいつの名前は知りません。同僚が言うには「豚」という一言。とにかく、この豚、同僚が留学している時に飼い始めたらしいのですが、同僚と全く反りが合わず、隙さえあれば噛まれる→蹴り上げる→噛まれるの繰り返し。結局、彼がUCLAを卒業して帰国するその日まで、血まみれの抗争をしていたというのですよ。
「○○ちゃん(俺の事ね)にも見せてやるよ」といって、彼が豚の居場所に連れて行ってくれました。
 そいつは中庭にでる網戸の真下に居ました。あのね、ミニ豚っつっても育つからね、アレ。俺が見たのはソファーぐらいある黒い肉のかたまり。そいつがダルそうに寝ている姿は、ちょっとしたトドです。
「本当にこの豚ムカツクんだよ」
 同僚はそういって網戸を少しだけ開けたんです。そのとき。
「ぶぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 奴は寝たふりをしていたんですよ。絶叫とともに網戸に体当たりをかまし、ぼがん!つって室内に乱入。ちょっと想像してみ?ソファー大の肉のかたまりが憎悪をむき出しに突進してくる状況を。俺はビックリしてテーブルに飛び乗り、同僚は「てめえ今日こそぶっ殺してやる!」と絶叫して飛び蹴り。豚はそれを弾き飛ばしてテーブルに体当たりして俺は転げ落ち、その状況に室内犬のちっこいの(ここんちは犬も飼ってた)がカーニバルか何かと勘違いしたのか完全発狂。失禁しながら右往左往する始末。同僚はブチ切れて椅子で豚を殴り、豚は同僚に体当たりして噛み付くという血の惨事が炸裂。
 そんな駄目人間の祭典が終了したのは買い物からオバハンが帰って来て豚を家の外に放り出してからでした。
 まず、俺も、同僚も血まみれ。室内は豚と犬の尿が散乱。家具が半分崩壊。
 さすがに俺ぁ、あんときばかりは本格的に「こりゃヤベえ」と思いました。つか下手すると警察送りだろ。まあ、そんな俺の心配を他所に、同僚は「いつもの事だから気にしないでいいよ」と涼しい顔していました。でも流石にオバハンは呆れたらしく「どうして仲良く出来ないんだい、もう」と。彼は「I hate him.He hate me.That's all」と一言ですべてを片付けてしまいました。
 憎悪の本質を垣間見た気がしました。
 というか、ペットとして豚を飼うっていう発想は捨てた方が良いと思うぞ。